ぷろろーぐ

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私は物心付いた時には、一人のお婆さんと一緒に暮らしていた。 お婆さんはとても優しくて、花が大好きな人だった。 しわくちゃな大きな手で頭を撫でられるのが大好きだった。 何よりも、大好きなお婆さんだった。 でも、お婆さんは、病に倒れ、永遠に眠ってしまった。 そう。 私に、美しい庭を残して――。 その庭は、六角形のガラス板で張り巡らされ、外から見れば小さなガラスの箱庭。 だけど中に入ると、天井は高く、広々とした温室。 中央には小さめで六角形の噴水があって、とても幻想的。 季節に関係なく咲き乱れる、バラやひまわり。ヒヤシンスにチューリップ。様々な花が植えられていた。 そこは、一年中ずっと、枯れる事を知らないかのように咲き乱れる。 その庭の持ち主が、私ユズキ。 ファミリーネームはない。 だって私は、身寄りの居ない子供だから。 お婆さんと暮らしてた、思い出が詰まっている、森の中にポツンと建っている山小屋に一人、私の新しい生活が始まった。 私が守る。 あの庭もこの場所も。
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