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まぁ、疑問に思うよね。
だって、あの庭は見た目は本当に掃除用具ぐらいしか入ってなさそうなぐらいに小さいから。
「…寝てました。」
とりあえず、これだけしか言い訳が出来ずにいると、ガディロンさんが、紅茶を飲みながらこっちをジーッと見ていた。
居心地悪っ…!
「嘘だな。目が泳いでるぞ。何を隠している。」
目、泳いでましたか…。
でも、本当の事を言うわけにはいかない。
私はあくまでも花売り。
よし。明後日は薔薇を売ろう!
「行くぞ。」
「ど、どこにですか!?」
紅茶が入っていたはずのカップを覗けば、空になっていた。ついでにさっきまで紅茶が入っていたはずの私のカップまでもが、空だ。
「紅茶はなかなか美味かったぞ。」
顔は銀色の兜によって隠されていてよく見えないが、形の良い唇の端が上がったのはバッチリ見えた。
外に出ると肌寒かった。
「だ、誰にも言わないでくださいね!」
「分かってる。」
ガラスの扉をゆっくり押して中へと入る。
そこは夜だというのに、月の光に照らされて、昼間とは別の顔を見せる。
それは実に美しい。
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