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「ここで、私は薔薇の棘取りを……」
横に立っていたガディロンさんは、被っていた銀色の兜を取り、素顔が晒された。
ハニーブラウンのちょっと癖のある髪。
つり上がった緑色の目は、とても優しい。
口元は綺麗な弧を描いていて眉目麗しい。
私よりも軽く頭一つ分は大きい身長にがだいの良さそうな体躯。
正直、格好良くて見惚れる。
顔に血が集まってきて、顔が熱い。
この庭に、彼のような美形が居る事が当然のように思えてしまう。
「……夢のような場所だな…」
ズカズカと奥の方に入っていくガディロンさんの後を追う。
「この時期に咲くはずのない花。」
秋に入るという季節になってきた今、昼間は少し暑くても、夜は肌寒い。
そんな時期に、チューリップは咲かない。
屈みながら、チューリップを優しく撫でるその姿は物凄く絵になっている。
「ここは不思議なところだな。」
更に奥に行くと、まだ実るはずのないリンゴがある。
「イチゴに、リンゴに、モモ。ミカンにブドウまであるのか。」
実に楽しそうに庭内を見回るガディロンさんは子供のようで、私は少し笑ってしまった。
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