軌の先へ

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「寓話だよ。寒空の下、二匹のヤマアラシがいて お互いに温め合おうと寄り添うんだ けれど、互いの針が刺さって近付けず、かといって離れれば寒さで凍えてしまう この二つの葛藤を繰り返していくうちに、二匹は互いのベストな距離感をつかんでいくんだ」 玲汰の眉が訝しげに歪む。 「…俺たちが、ハリネズミだって?」 「そう。もっと踏み込みたいのに、互いのトゲが邪魔してすれ違ってばかり」 俯く戒。 「お話みたいにさ、二人には見えない壁があって、相容れぬままはなれてしまうんじゃないかって…怖かったんだ」 「怖い…?」 どうして戒が? まるで自分の事のように… 「なんで…?」 「僕にもわからない」    
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