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「わかんないけど、僕はとても悲しくて嫌だった」
でもね。と戒は笑顔で付け足した。
「そうはならなかった。ヤマアラシは気が付いたんだよ。針を畳めばいいことに」
玲汰と流鬼を指して、つらつらと胸の位置まで辿って両の人差し指を添い合わせる。
「自分ばかりを守っていても、他の誰ともわかりあえない…」
ふと呟く玲汰。
遠くから、メンバー全員を呼び集めるスタッフの声が聞こえる。
「そう。気付いた玲汰、すごいぞ」
玲汰の胸板を力強くど突いて、戒は彼の手を引いて走りだした。
「行こう!呼んでる!」
セットに五人並んで、いつも流鬼だけが少し前に出される。
「一番のキメでお願いしまーす」
カットごとに自由に動く。
ふとポージングの最中、流鬼と背中が触れた。
(あ…)
どうしても意識してしまう玲汰の動きが止まった。
流鬼は振り向かず、その口元だけを不適に吊り上げ、玲汰の脇腹を肘で小突く。
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