紗智―Sathi―

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私達は、何だか馬鹿馬鹿しくなってフェンスの中へ戻り、そのまま夕日を背にして腰を下ろす。 彼女は「私は二組の羽山 紗智」と名乗った。 私は、自分の事も話そうとしたが、彼女の「授業中、いつも君の事見てた」と言う言葉に遮られた。 「私を……知っているの?」 そう言って彼女の顔を改めて見る。 綺麗だった。 夕日が当たってキラキラ光る彼女の笑顔。 とても飛び降りようとしていた人の顔じゃない。 「知ってるよ。一組の駿河 奈央子さんでしょ?同じニオイがするって前から思ってた」 私は、彼女と選択の授業が同じである事を思い出す。 「確か……世界史が一緒だよね?」 彼女は「うん」と優しい笑顔で頷いた。 頭の中にあの時の映像が浮かぶ――。 授業中、ふっと視界に入り込んできた彼女の長く美しい黒髪は、短くて少し癖っ毛の私には憧れで。 でも本当にそれくらいにしか思った事もない。 話す事もなかった。 「……どうして自殺しようと思ったの?」 私は、こんなに生き生きと輝いている彼女が何故、自分と同じ様にしようとしていたのか気になった。 「知りたい?」 彼女は、意地悪そうに言う。 私は、普段とは違って素直に首を縦に振った。
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