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「先に教えてくれたら」と彼女はにっこり笑う。
そんなのずるい、と思ったが何故だか彼女には全て話せる気がした。
「……あの夕日を見てて思った。あれに飛び込んで死ねるなら、美しい死に方になるのかな、って」
「美しい死に方?」
「……うん。小さい頃からそればかり考えてる」
車に轢かれて道端で死んでいる動物。
ぐちゃぐちゃに踏みつけられた花。
そういったものを見るたびに「神様、私の命を分け与え、生き返らせて下さい」と願っていた。
そんな子供だった。
私の命を皆に分け与える事で、私の命が例え朽ち果てたとしても、その死に方は実に美しいと言える。
「君って変わってるね。普通美しい死に方したいって思ってても実行しようとする人、いないよ」
彼女に言われて私は首を横に振った。
「実行出来るかもって思ったのは……今日が初めてだった。いつもは真似してるだけ。真似してると冷めちゃうの。こんなの……美しくないな、って」
「だからか!あの難しい顔して授業中、手首に定規当ててたやつ!」
私はそんな恥ずかしい所をずっと見られていたのかと思うと、少し可笑しくなった。
ぷっと吹き出すと、身体の中から可笑しさが込み上げてきて、声に出して笑ってしまう。
そんな私を見て、彼女も笑った。
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