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こうして人前で笑ったのは本当に久しぶりだった。
こんな、今話したばかりの子の前だと言うのに。
確かに彼女は、今まで逢ったどんな子とも違う気がする。
不思議と気が許せる。
まるで以前から友達だったかの様に。
「それで、羽山さんの理由は?」
私がそう聞くと彼女は「紗智で良いよ」と笑った。
「紗智……は何故なの?」
紗智は、少し考えた様にして言う。
「私は……やっぱり内緒!言ったら君は引いちゃうかもしれないからさ」
「何それ!?」
唖然としている私に紗智は、微笑みかけてすっと立ち上がり、手を差し伸べてくる。
「とりあえず!友達、ううん、今日から親友になろう!」
一瞬、裏切られて悔しかったのに、何故か拒めなかった。
私は、その手を取ってしまう。
「一緒に帰ろう!」
そう言われて、手を握られて気が付いた。
この感じ……。
初恋に似ている。
私は別に同性愛者ではないし、同姓に好意を抱いたのはこれが初めてだった。
紗智だから、だったと思う。
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