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「もしもし?」
さっきまで一緒にいたのに、こうして機械越しに話をするのは、何だか照れ臭い気がする。
『奈央?紗智だよ。……御飯、食べた?』
「ううん、今からだよ。」
『今、一人?』
「うん。」
『一緒に御飯食べちゃ、駄目かな?』
紗智は、決して人に甘える様な事はしないタイプに見えたのに、私には甘えた様に話すのが何だか妙に可愛くて、部屋が片付いてもいないのに、「いいよ」と咄嗟に言ってしまった。
十分くらいして、玄関のチャイムが鳴る。
ドアを開けると、制服のまま片手にコンビニの袋をぶら提げた紗智が居た。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
紗智は、キョロキョロと部屋の中を見回している。
「散らかっててごめんね」
「良いよ。急に来たのはこっちだから」
テーブルの上の沢山の料理を見て、「両親、帰って来るの?」と紗智は聞く。
「ううん、今日は来ないよ。父親は居ないし、家は母親だけ」
紗智は、何だか悲しそうに「そうなんだ」と言った。
「紗智は……良いの?家に帰らなくて」
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