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時間が……止まった気がした…
周りの雑音も、動きもオレの意識には引っかからない。
オレの意識は、目の前の一点にしか向いていないからだ。
「……かお…る……?」
一瞬、目を疑った。
だが、目の前にいる少女は紛れも無く彼女だった。
見間違えるハズがない…
毎日のように見てきたのだから。
綺麗な栗色の髪。
雪のような純白の肌。
アレは、間違いなく香。
「か、香っ!!」
そして、オレの足は頭で考える前に動いていた。
人混みを掻き分け、目の前にいる少女に向かって突き進む。
だが、香はオレに気付かないまま、オレに背を向け歩いて行く。
必死に人を掻き分けて進むオレに対し、小柄な彼女は人の間をスルリスルリと進んで行ってしまう。
くっ…!……追い付けない…!
このままでは見失うなってしまう…
オレは大きく息を吸い込み、力の限り叫んだ……
彼女の耳に届くように…
「待て…待ってくれ!香っ!」
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