さようなら、誠様…

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「しかし……香…もぅ、決まってしまったことなんだから仕方が…」 「イヤ!絶対に行かない!」 おどおどと話す父。 しかし、私はお構い無しに怒鳴り散らす。 互いに譲らないまま、そんな口喧嘩が数十分続いた。 「ヤダ!私はここに残るから!」 「何度言えば解るんだ!いい加減にしないか!」 「ヤダったらヤダ!」 「香っ!!」 父が叫んだ。 その瞬間だった… パシーン…! 私の頬に、強い衝撃が走った。 私は、その突然の事に反応出来ず、そのまま床に尻餅を付く形で倒れた。 「あ…」 父の情けない声が、静かなリビングに小さくこだまする。 そして、父の声と共に私は今の状況を理解する。 私がこの世に存在してから16年… 私は、初めて父に叩かれたのだった…
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