46312人が本棚に入れています
本棚に追加
/620ページ
口の両端をこれでもかという程に吊り上げ、不気味に男はそう呟いた。
まるで悪魔が欲しい物を手に入れたような、下品な笑み…
男は全くの別人になっていた。
これが本性か…
「もうすぐアンタのフィアンセが倉庫に着く……ここじゃない、オレ達のもう1つのアジトの方にな…」
「……もう1つ…だと?」
何故だ?
もう1つのアジトとやらに、手下共を待機させて誠を襲うつもりか?
…何故そんな意味の無い事をする?
最初からこの場所に集合させて、誠を呼び出せばいいではないか…
「…不思議そうな顔をしてるな。何故最初からこの場所に呼び出さなかったのか。とでも思ってるんだろ?」
私の表情から心情を読み取ったのか、男にズバリと言い当てられてしまった。
言い当てられた悔しさで、何も言い返せない私は、ただ 男を睨むだけ…
「…覚悟を決めて女を助けに行ったとしよう。そこに何人敵がいようが、大切な女を守るために敵地に乗り込んだとしよう…」
腕を組み、語り始める男。
とても楽しそうに…
「でも、助けに行った場所に目当ての女が居なかったら? 目の前に広がるのは、予想を超えた敵の数のみ…
これほどなまでにマヌケな状況が他にあるか?
意を決して助けに入ったというのに、目当ての女が居ないあげく、何十人という不良に囲まれ、ただ 何も出来ずにボコられる。
こんなに情けない状況など、他にありはしない!」
最初のコメントを投稿しよう!