また、日常へ…

24/75

46312人が本棚に入れています
本棚に追加
/620ページ
口の両端をこれでもかという程に吊り上げ、不気味に男はそう呟いた。 まるで悪魔が欲しい物を手に入れたような、下品な笑み… 男は全くの別人になっていた。 これが本性か… 「もうすぐアンタのフィアンセが倉庫に着く……ここじゃない、オレ達のもう1つのアジトの方にな…」 「……もう1つ…だと?」 何故だ? もう1つのアジトとやらに、手下共を待機させて誠を襲うつもりか? …何故そんな意味の無い事をする? 最初からこの場所に集合させて、誠を呼び出せばいいではないか… 「…不思議そうな顔をしてるな。何故最初からこの場所に呼び出さなかったのか。とでも思ってるんだろ?」 私の表情から心情を読み取ったのか、男にズバリと言い当てられてしまった。 言い当てられた悔しさで、何も言い返せない私は、ただ 男を睨むだけ… 「…覚悟を決めて女を助けに行ったとしよう。そこに何人敵がいようが、大切な女を守るために敵地に乗り込んだとしよう…」 腕を組み、語り始める男。 とても楽しそうに… 「でも、助けに行った場所に目当ての女が居なかったら? 目の前に広がるのは、予想を超えた敵の数のみ… これほどなまでにマヌケな状況が他にあるか? 意を決して助けに入ったというのに、目当ての女が居ないあげく、何十人という不良に囲まれ、ただ 何も出来ずにボコられる。 こんなに情けない状況など、他にありはしない!」
/620ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46312人が本棚に入れています
本棚に追加