また、日常へ…

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「しかし…夜咲さん、ちょっと遅くないですか?」 時計を見ながら、青髪の男が呟く。 イライラしているのか、先ほどから足が小刻みに揺れている。 「…まぁ、いくら40対1とは言え、多少は手こずってるのかもしれねぇな… 龍崎の野郎は空手の天才らしいからな…そう簡単にいくとは思ってなかったし…」 コイツ… そんな事まで知っているのか… 「でもまぁ、どれだけ龍崎が悪あがきをしようが、40人の集団に勝てる訳ねぇよ」 そう言って不気味に笑う銀髪の男。 その笑みを見た瞬間、私はどうしようもない恐怖を覚えた… 40人… 誠は本当に大丈夫なのだろうか…? いや、大丈夫な訳がない…! 個々の力が弱いミツバチは、自分達より遥かに強いスズメバチに巣を襲われた時、大群となってスズメバチを撃退するらしい… つまり、どれだけ強かろうと、多勢という力の前では無力になる。 今現在、誠がおかれている状況はまさに上の例と同じ… 誠…! 無事でいてくれ…! 「…ほら…噂をすれば何とやらってやつだ……来たみたいだぜ」 銀髪の男はニヤリと笑いながら、倉庫の入り口を凝視していた。 その瞬間、分厚い鉄の扉が耳障りな音を立てながらゆっくりと開き始めたのだ。 薄暗かった倉庫が、差し込む外の光によって明るく照らされ始める。
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