46313人が本棚に入れています
本棚に追加
私がハンカチを取り出そうとする手を止め、誠は右手を天井に向ける。
その指の示す方向を目で追って行くと、3m程の高さの場所に人1りがギリギリ通れそうな小さな窓があったのだ。
しかし、あの高さはどう考えても届かない…
背伸びをしようがジャンプをしようが、身長170cm程の誠では、とても届く距離じゃなかった。
「あぁ…アレか。でもあそこはムリじゃないか? 少し高すぎるんじゃ」
「大丈夫だ。オレがお前を肩車すればギリギリ届くさ」
肩車か。
確かにそれなら届くだろう…
だが、もし私が出られたとして…残った誠はどうなる?
1人ではどう足掻こうが絶対に届きはしない。
………まさか…
「…誠…お前。自分が犠牲になるつもりじゃないだろうな…」
ギロリと誠を睨む。
まさかとは思ったが、誠の性格を考えると、こういった結論を出してしまうような気がした…
もし本当にそんなつもりだったのなら…
許さない。絶対に。
「はっ…バカ言うなよ。何でお前の為にオレが死ななきゃダメなんだっつーの。ちゃんとオレも脱出するって…」
呆れたようにため息をつく誠。
そして、ある場所に指を向けた。
誠が指すその先にあったもの。それは…
「脚立?」
「そ。オレは後からアレで脱出する。 とにかく今は一刻を争うんだ。とりあえずお前を先に逃がすから、お前はすぐ消防に連絡を入れてくれ」
「む…」
「ほれ。理解したらさっさと肩に乗れ!時間がねぇ!」
最初のコメントを投稿しよう!