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だんだんと暗闇に目がなれてきて、目の前にいる何かがわかった。
「……っ」
あたしと同じくらいの年齢で、とてもとても美しい顔立ちの女の子が立っていた。
お人形さんのように無表情で、硝子玉のように大きな瞳は、私の目を惹き付けた。
「陽子」
少女はぽつりとあたしの名前を呼んだ。
「あなたは…どちら様…です…か…?」
あたしは恐る恐るたずねてみたら、少女の瞳孔がカッと開き、紅くて綺麗な形の口が、ひん曲がるように開いた。
怖い。
こんな映画を見たことがある。
そう、幽霊ものの映画だ。
少女は人間のような雰囲気をもたない、幽霊のような存在に感じる。
怖い。
「あなたは私のことなど、何ひとつ覚えてないの?」
少女の白い手が、私の首もとをつたう。
冷たい手で、鳥肌がたった。
「私は陽子のことを一度も忘れたことがなかったのに」
少女は酷く悔しそうに言った。
何の話?
あたしはその少女の異常さにただひたすら怯えることで、精一杯だった。
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