6月の雨

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  「冷たかった。苦しかった。何度も生臭い水を飲んで、嘔吐したくても吐き出せるものは何も入ってなくて」 その少女は何かを思い出すように遠い目をして、あたしの首を冷えた手で包みこんだ。 「だから交代。私が陽子に、陽子が私になるの」 なんのことなの? あたしは、どうしたらいいの? あなたは誰なの? 「……あ」 ある人物が一瞬だけ頭に浮かんだ。 いや、そんなはずはない。その子は6歳でこの世を去ったから……。 あたしは自分の思考を消そうとした。 「まだわからない?……姉さん」 ………やっぱりあなたは雨音? あたしの、双子の妹。 「……あ、ああ、あま、雨音?」 うまく言葉が話せない。 「やっとわかってくれた? 陽子」 雨音は私の首から手を離し、満足そうに微笑んだ。  
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