6月の雨

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  あたしの足に生温かい感覚がした。 雨音は微笑みを絶やさず、じっとこちらを見ている。 あたしは首を動かし、足元を見た。 学校指定の青いスリッパが、何故か黒く、にじんでいく。 最初はつま先だけが染まっていたのに、だんだんと暗闇が侵蝕してきて、やがてスリッパ全体が黒に染まった。 いや……染まったのではない。 溶けていっている………。 じわりじわりと足が消えていく。そしてそこから赤黒い液体がこぼれてくる。 痛くない。 ただ感覚のない妙な温かさが、薄気味悪いくらい続く。 足が完全に消えたあたしは、バランスを崩して転びそうになった。 すかさず雨音が私の脇の下に手を入れて、こけないように、支えてくれた。 「陽子は私のことを忘れて、毎日幸せそうだったね」 息がかかるくらいの至近距離で、妖しいほどの美しい顔をあたしに向けて、耳元でつぶやいた。 違う…。雨音を忘れてなんかいなかった。 違う違う違う違う違う……。 あたしの今までの記憶が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。  
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