6月の雨

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  『陽子…服を買ったの。どっちにする?』 お母さんの声が響く。 まだ若いお母さんの細い腕の中に、黒く地味な服と、華やかな桃色の服があった。 『陽子が先に選びなさい。雨音は妹なんだから、陽子の言うことをよく聞くのよ』 お母さんの口癖。 幼かったあたしは、迷うことなく好きな桃色のほうを選んだ。 お母さんは満足気にうなずいた。 あたしの双子の妹であった雨音は、この理不尽な環境に表情ひとつ変えず、ただ従うのみだった。 あたしはそんな雨音を気味悪く思った。感情を持たない日本人形のようで、恐怖を感じていた。  
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