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雨音に近づかないよう、お母さんにいつも言われていた。においがうつる、お母さんの唇はいつもその言葉の形を作った。
雨音の腕にはいつも、青い痣と火傷のあとがあり、腐ったような臭いがしていた。
雨音が死んだ理由はわからない。
増水した川で溺れた、事故だった、そんなことを、まるで今日の晩ご飯の献立を話すような調子で、お母さんが言っていただけだった。
お葬式をした記憶すらない。
あれから10年たった。
成長した姿のあなたが、あたしの目の前に現れるなんて。
生きていたら、こんなにも美しくなっていたんだね。
どこからくるのか、雨音にとても愛しさを感じる。
やっぱりあたし達は双子。顔は全く似ていないけど、どこかで必ず通じあっているのかな。
ああ、今すぐ、抱き締めたい。
「うそつき」
あたしが手を伸ばしかけたとき、雨音は何かにおびえるようにあたしを睨んだ。
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