6月の雨

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  雨音に近づかないよう、お母さんにいつも言われていた。においがうつる、お母さんの唇はいつもその言葉の形を作った。 雨音の腕にはいつも、青い痣と火傷のあとがあり、腐ったような臭いがしていた。 雨音が死んだ理由はわからない。 増水した川で溺れた、事故だった、そんなことを、まるで今日の晩ご飯の献立を話すような調子で、お母さんが言っていただけだった。 お葬式をした記憶すらない。 あれから10年たった。 成長した姿のあなたが、あたしの目の前に現れるなんて。 生きていたら、こんなにも美しくなっていたんだね。 どこからくるのか、雨音にとても愛しさを感じる。 やっぱりあたし達は双子。顔は全く似ていないけど、どこかで必ず通じあっているのかな。 ああ、今すぐ、抱き締めたい。 「うそつき」 あたしが手を伸ばしかけたとき、雨音は何かにおびえるようにあたしを睨んだ。  
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