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なんでだ。
「この部屋から出ようとしても、見えないバリアみたいなのがあって、跳ね返されるんだ。物とかは触れるんだけど、ドアノブは回せないみたいだし、窓を開けようとしても、強い力で引き戻されてしまう」
「そんな…」
頭が痛い。今日はよく頭を使う。
もしかしてこのままだと、私生活全て、クラスメイトの…しかも女子に、見られることになるということか?
しかも俺は木下さんの姿が見えない。どこにいるのかわからない。
「え、ちょ、ま、……え!?」
「…あははっ。そうだよね…ごめん」
こういうことになるのなら、あのまま雨に打たれて、駅で電車がくるのを大人しく待っておけばよかった。
でも後悔をしても、過去は変わらない。今の木下さんだって、そう割り切っているはずだ。
「不思議だよね…。今まであまりしゃべったことなかったのに、こんな夜、一つ屋根の下にいるなんて」
木下さんの冗談めいた発言に、少しだけ和んだ。こういうときこそ、明るくいるほうが得だろう。
しかし今の俺には、そんなポジティブでいられる余裕はない。
どうしたらいいんだ。
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