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木下さんがこの部屋にいなくなるには、木下さんが元の体に戻ることが必要だ。
しかし今、木下さんの体には、今は亡き双子の妹である、雨音の魂が入っている。
ひとつの体にふたつの魂は入らないから、木下さんは雨音に追い出され、ここにいるわけだ。
逆に考えれば、今、木下さんの体にいる雨音を、もとの魂だけの存在に戻せば、自然と木下さんも元の自分の体に戻るんじゃないか。
問題は、どうやって雨音を木下さんの体から追い出すのか、だけど。
やばい、俺、名案じゃね?
俺はこの話を木下さんに提案した。
木下さんは渋い返事をしたが、承諾してくれた。多分、雨音がこうなったのも自分の責任だと思っているから、罪悪感があるのだろう。
「じゃあそれまでの間、よろしくね」
「ああ」
木下さんの姿は見えないので、俺は天井あたりに向かって言った。
それにしても、俺に雨音を説得させる力があるだろうか。
一目見ただけで、逃げ出したくなるようなあの妖気に立ち向かえるだろうか。
…………考えるだけ無駄か。今日は明日にそなえて眠ろう。
明日になれば、木下さんがいなくなっているかもしれないし。
「じゃあ俺は寝る。おやすみ」
「うん!!……おやすみなさい」
俺は電気を消し、布団に入って、ゆっくりと目を閉じた。
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