きりんの涙

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まだ太陽が地平線の下で眠っている真っ暗な朝。外は身体の芯まで凍りつく寒さだろう。 私は全く人通りがない道の端に車を停めて大きな欠伸をした。 ハンドルの横の時計を見ると4時28分。そろそろかなと思い鞄から携帯電話を出して浅田さんに掛けた。 「あっおはようございます。もうすぐ4時半なので起きてくださーい。」 「わかった。すぐ行くから。」 電話の向こうで声がしてから1分も経たないうちに、目の前のマンションからグレーのスウェットの上に明るい緑色のダウンジャケットを着た浅田さんが出てきた。 「おはようございます。早いですね。起きてたんですか?」 いつもは何回も何回も電話をしたり、部屋まで行って半分寝ている浅田さんを引きずって車に乗せていたので、ちょっとびっくりした。 「うん…」 浅田さんはそう言うと車の後部座席に乗り込んだ。
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