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「まっ、忙しかったのはそれだけじゃねえけどな」
「ん、なに?」
「んにゃ、なんでもねぇよ」
晃がとぼけるということは、僕が知らないか知られたくないということだと、長年の連れ添いから理解できた。
二人で担任が来るまでの時間を有意義に利用していると、
「なんだ男二人で良い雰囲気を醸し出しおって」
腰まで伸びた金髪を揺らしながら、メリアさんがやってきた。
「…刀弥、悪いことは言わん。その道にだけは進むな」
来て早々に勘違いや妄想全開だった。
「そんなのじゃないよ。結構時間かかったね。なんの呼び出しだったの?」
メリアさんは登校してすぐに職員室に呼び出されていた。
「ん? 別に大した用ではなかったよ」
そう言いながら、メリアさんは自分の席に座る。
だが、それにさえ僕は違和感を覚えた。
メリアさんが、こんなにすんなりと話しを打ち切ることが気になった。
「本当に?」
メリアさんは一瞬驚いた表情を見せた後、すぐにやんわりとした笑みを浮かべた。
「私を気にしてくれるのは嬉しいが、そんな反応をされるとイジメたくなるではないか」
まっ、マズい。
メリアさんのサディストの血が覚醒(めざめた!?
逃げようにも、すぐ担任が来る時間だ。
教室に居なければ欠席扱い。さらに夏休みの課題未提出のオマケ付きだ。
そうなれば待つのは地獄の補習部屋である。
だが、今この場に残るのもまた地獄。
「ほら刀弥。私にかまって欲しいのであろう?」
妖艶な笑みと共に、逃げ場のない地獄が始まろうとしていた。
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