第一章

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「まっ、忙しかったのはそれだけじゃねえけどな」 「ん、なに?」 「んにゃ、なんでもねぇよ」 晃がとぼけるということは、僕が知らないか知られたくないということだと、長年の連れ添いから理解できた。 二人で担任が来るまでの時間を有意義に利用していると、 「なんだ男二人で良い雰囲気を醸し出しおって」 腰まで伸びた金髪を揺らしながら、メリアさんがやってきた。 「…刀弥、悪いことは言わん。その道にだけは進むな」 来て早々に勘違いや妄想全開だった。 「そんなのじゃないよ。結構時間かかったね。なんの呼び出しだったの?」 メリアさんは登校してすぐに職員室に呼び出されていた。 「ん? 別に大した用ではなかったよ」 そう言いながら、メリアさんは自分の席に座る。 だが、それにさえ僕は違和感を覚えた。 メリアさんが、こんなにすんなりと話しを打ち切ることが気になった。 「本当に?」 メリアさんは一瞬驚いた表情を見せた後、すぐにやんわりとした笑みを浮かべた。 「私を気にしてくれるのは嬉しいが、そんな反応をされるとイジメたくなるではないか」 まっ、マズい。 メリアさんのサディストの血が覚醒(めざめた!? 逃げようにも、すぐ担任が来る時間だ。 教室に居なければ欠席扱い。さらに夏休みの課題未提出のオマケ付きだ。 そうなれば待つのは地獄の補習部屋である。 だが、今この場に残るのもまた地獄。 「ほら刀弥。私にかまって欲しいのであろう?」 妖艶な笑みと共に、逃げ場のない地獄が始まろうとしていた。
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