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「誓いをしましょう」
古い孤児院の一角、樹齢数百年をゆうに超す木の下、三人の少女が互いを見据えていた。
「私は絶対に、皆が平和に生きれる道を敷きます」
一番、立ち振る舞いが上品な少女は、二人に向かって誓った。
「…私は、貴方が敷いた道を歩み続けると誓う」
髪を後ろで括りつけた無表情の少女が、二人に誓う。
「わっ、私は困難に向かう二人を助けると誓います」
一番小柄な少女が、言葉を選びながら二人に誓う。
「では、手を合わせ、誓いの契約を」
三人は手を取り合い、目を閉じる。
山あいから吹き抜けるそよ風が木々を揺らし、木の葉が数枚少女たちに降り注ぐ。
だが、少女たちは微動だにせず、瞑想のような状態を続ける。
時間にして五分を超えた。しかし、普段から主への祈りをしている少女たちには苦ではなかった。
「………はい、誓いの儀、終了です」
上品な少女が、一番に目を開き、終了を宣言する。
「カミーラ…本当に行っちゃうの」
涙目で訴えかける一番小さい少女。
「ほら可奈子。泣かないの。これが今生の別れという訳ではないのですから」
「でも…」
「神楽を見習いなさい。どんな時も動じず、冷せ…」
カミーラと呼ばれた少女の口が止まった。
見れば、神楽と呼ばれた少女は何も言わず唇を噛み締め、瞳を潤ませていた。
「かっ、神楽も泣かないのです。これでは何のために誓いの儀をしたのかわかりません」
まさか神楽までが感極まるとは思っていなかったカミーラは、泣きいる二人に困惑気味だった。
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