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季節は夏も終盤戦の九月。
夏休みという学生最大の長期休暇も終わり、僕は鞄の中に夏休み中に出された課題を積めた。
「え~と、あとは…」
鞄に積めた物の確認をしつつ、時間をチェック。
あっ、そろそろ…だ。
「刀弥様」
「は~い、ちょっと待って」
聞こえた神楽さんに返事し、鞄を手に部屋を出る。
「行ってらっしゃいませ」
玄関前では、凛とした佇(たたず)まいの神楽さんと、眠たそうに瞼(まぶた)を擦るカロルが出迎えてくれた。
「刀弥様、これを」
いつもと同じメイド服姿の神楽さんが、いつもと同じ弁当箱を手渡してくれた。
「ありがとう神楽さん」
それをあらかじめ空けておいた空白に積める。
「お兄さん、行っちゃうの~?」
カロルが行っちゃ嫌々オーラを隠すことなく、僕に放ってくる。
「うん、今日から学校だから、あっ、でも今日は授業もないし、昼過ぎまでだから、終わったらすぐに帰るよ」
カロルの頭を撫で、寂しがり屋を宥(なだ)める。
カロルは、早く帰って来てね、といい、トボトボと自分の部屋へと戻っていく。まだ寝足りないらしい。
「カロルも大分、素直になりましたね」
うん、と頷く。
この家で暮らすようになった当初は、本当にただのわんぱくな子供だったが、最近は多少は大人しい子になった。
僕は玄関前で靴を履きながら、
「ごめんね。毎日カロルの面倒を見てもらって」
「いえ、私は多少なり、話し相手が出来ましたので」
目を瞑り、淡々と語る神楽さん。
僕はありがとうと返し、靴の踵(かかと)を二度三度、地面で叩く。
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