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「じゃあ、行ってきま」
「刀弥! 迎えに来たぞ!」
バンッと玄関の扉が勢い良く開かれ、僕の目の前には、金色(こんじき)の穂を携えた女性が、現れた。
「おっ、おはようメリアさん」
「ん、おはよう刀弥」
と、返す言葉と共に、僕の唇が何かで塞がれた。
ん、ん!?
僕の目に映るのは、青い瞳を閉じたメリアさんの顔で、唇に触れる感触は、メリアさんの唇。
いつも予想外の行動に出るメリアさんだが、まさか朝一番からこんな行動をされると予想だに出来ていない僕は狼狽えることさえできす、硬直したままだった。
時間にして、じっくり十秒。
メリアさんがゆっくりと唇を離した。
「メっメっ、メリアさん…」
「ふふふ、挨拶として接吻するのは、常識ではないか」
ないないない! そんな常識は現日本ではほとんど浸透してないから!
「…にしても」
狼狽する僕を横目に、メリアさんが僕の背後に目を向けた。
「こんなことをして、眉一つ動かさないとは」
僕の背筋が凍えるような寒気に襲われる。
メリアさんがこんな行動をとった後、待ちかまえるのは凄惨なメリアさんと神楽さんの争いが始まる……筈なのだが…。
「メリア様、お戯れは程ほどに」
メリアさんの言うとおり、振り返り神楽さんの動向を見てみるが、慌てた様子はない。
それがかえって不気味ではあるのだが…。
「なんだその余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)な態度は? 刀弥のことは諦めたか?」
神楽さんはふっ、と笑い、
「まさか、ただメリア様のように行動で刀弥様への愛を表現されるだけが、全てではありませんから」
勝者の余裕を見せるような神楽さん。
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