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「くっ…なんか腹立たしいな。やはり、あの祭りで何かあったんじゃないか? 刀弥、正直に答えろ」
苦々しい表情を浮かべた後、メリアさんの矛先が僕に向けられた。
「えっ、そっそんなことなかったよ」
だが僕からすれば、あの祭りはハプニングの連続ではあったが、そんなイベントみたいなことはなかった…と思う。
「ふん、刀弥がそう思っているだけで、神楽にはあったということか…、ああ! やはり二人でデートに行かせるなんてさせなければよかった!」
悔しそうに吐き捨てるメリアさん。だが、そこに神楽さんから追い討ちがかかる。
「何を言われますか?
私たち二人だけで出かけたため、帰ってきた大広間は大量の酒の空瓶と、泥酔した貴女とカロル。貴女方を部屋に運ぶだけで、私や刀弥様がどれだけの苦労と時間をかけたか、泥酔していた貴女には判りかねましょう」
神楽さんの言うことに思わず頷く僕。
あの時の苦労と言えば、言葉で表現するのは難しい。
「それに仮とはいえ、メリア様とカロルはこの世界では未成年扱いなのですから、あのように着の身着のままに酒に浸るのはお止め下さい」
メリアさんはこの世界の住人ではない。
紅種と呼ばれる異界人は遥か昔からこの世界と接し、互いに様々な協定を結んできた。
その一つが、年齢の認証だ。紅種は見た目と実年齢が一致しない。小学生にしか見えないカロルは百を超え、メリアさんに至っては二百歳を超えている。
そのため、見た目に似合った年齢で彼らはこの世界で生活する。
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