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「そんなこと言われてもな、別に私やカロルは対特に年齢申請しているわけじゃないからね」
「…では、今から対特の移住者登録に行かれますか?」
「ふん、そんなことをすれば、私やカロルはすぐに保護という名目の監禁だ。まさかそんなことも判断できないのか…」
「なら、少しはご自身の言動に御注意を」
いつもとは違うピリピリとした空気が僕の間を行ったり来たりしている。
補足しておくと、メリアさんは紅種の王族で第一王位継承者、カロルは『真祖返り』と呼ばれる紅種の中でも希少な存在だ。その二人ともが、とある事情で隠れてこの世界で生活している。だから、二人は何より自分の存在がバレることに気をつけなければならないのである。
「……ふん、あんなやけ酒はもうせん!」
「メリアさん…」
酒に酔いつぶれたあの時のメリアさんは不安だったのかも知れない。
自惚れではないけれど、そうさせたのは僕なんだと思う。
「……ほら、そろそろ行くぞ!」
暗い表情をしていた僕を見て、気をつかってくれたのか、メリアさんが僕の手を引き、外に出ようとする。
「あっ、う、うん、じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ。刀弥様」
姿勢良よく頭を下げて見送ってくれる神楽さんを背後に、僕とメリアさんは家を出た。
「ほんと、夏休みなんてあっという間だな」
学校に到着し、席に着いた早々、僕の前まできた晃が愚痴っぽく言ってきた。
「…おはよう。朝会ったら、まず挨拶しようよ晃」
「おう、おはような」
後付けみたいな挨拶だったが、晃は結構な気分屋だから、僕はあまり気にしない。
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