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「やべっ、もう帰らないと」
彼はポケットから携帯を取り出しため息混じりに口にした言葉と共に
表情は寂しげに見えた
「そう、なら明日もこの場所で会おうよ」
私の言葉に彼の表情は益々曇る
彼は機材を片付けながら重たい口を開く
「明日、この街引っ越すから・・だから」
私は彼の言葉に周りの温度が下がる感覚に襲われる、胸に走る痛みに
私は言葉を失う
「約束しよう、来年の今日。この場所にまたくるから、そしたらあの星に
名前をつけよう」
私のそんな様子に彼がこんな提案を持ちかける、彼は私に近づき
私の額にそっと口付けを落とし微笑む
「うん、約束」
私達は小指を絡め強く握る、一瞬の触れ合いに彼は私に熱を残していく
帰り際に彼が振り向き大きな声で叫ぶ
「なぁ!!名前・・・なんて言うの?」
私は彼の言葉に思わず吹き出して笑ってしまう
「セイラ、月村セイラ」
「俺は卯月冬牙。じゃあな、セイラ・・一年後この場所で
やくそくだからな」
彼は大きく手を振り自転車で丘をくだって行った
私達はあんなに長く居たのにお互いの名前を聞くのを忘れていた
なんて間抜けな話。
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