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「お姫様には珍しい物ばかりだろう?
アタイの名前は夕凪楼閣の遊女さ。こう見えても太夫なんだよ」
夕凪と名乗る女性は自分の素性を話してくれた。
秋人は私の隣に腰を下ろし黙って夕凪の話に耳を傾けていたが
それを制止するよう言葉を紡ぐ
「夕凪、そんなことより・・」
夕凪は扇子をパチンと閉じ秋人の口に当てると微笑み
「分っているよ、せっかちなお人ね。
もう少しこの可愛い姫さんと話させてくれてもいいものを、
女にモテないよ」
口元を緩ませ嫌味まじりに鼻で笑うと物腰柔らかく立ち上がり
私を身下ろすと
「せっかちな旦はんがはよう言ってるからまた話しましょうね、
アタイについておいで。秋人覗いてはいけませんよ」
ワザと秋人を見て奥の部屋へと続く襖に手をかけ開けると
私はそれに続いて中に入る奥の部屋は先ほどの部屋より少し広く
華美な着物が掛けられており鏡台には簪や化粧道具が置かれていた
夕凪は私を部屋の中央に来させると
桃色生地に小さな小花をあしらった着物に黄色の帯を持ってくる
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