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「良い詠にございます、今の時期を十分現されておられて」
葵の言葉に嬉しそうに短冊を眺めていると
廊下が軋み威厳を放ちながら数名の女中と家老を連れ
父親が私に歩み寄ってくる
「父上、おはようございます」
私にとって父親は逆らってはいけない相手、
父の前では言葉は無力だと思い知らされる事が多かった父は
自分の意見を曲げることはせず父の意見は正論で
私の意見は子供じみた反抗としてしか受け取ってもらえない
父の前に立つと妙な緊張が走り
私は精一杯の笑顔を作り着物の裾をきゅっと掴みながら挨拶をすると
父は私に視線をなげ直ぐに戻すと広間に向かい歩く足を止めずに
「あまり葵に迷惑かけるでない」
一言だけ言葉を紡ぐと早々に立ち去ってしまう、
私は消え入る声で小さく返答すると父の背を儚げに見送る
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