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葵を見送った後で視線を庭に戻すと消えうる声で届かぬ願いを口にする
「行けないのかな・・・花祭り」
「連れてってやろうか?」
突然、聞きなれない声がしガサっと木々が揺れたかと思えば
トンっと足音を立て人が目の前に降り立ち私は驚いて声をあげそうになると
その唇を手で塞がれる
「騒がないで、せっかくお前さんの願い叶えてやろうってのに」
その人をよくよく見ると黒髪を後ろで結びくりっとした瞳に
少し焼けた肌村の子供らしく動きやすい服装、歳の頃なら15~16の少年。
私はコクコクと頷くと少年は安心したようにゆっくり私の唇から手を離すと
私は小さく咳き込み大きく息を吐く
「大丈夫か、悪い」
少年は私の背を撫でながら心配そうに覗き込む
私は落ち着きを取り戻し少年に手を小さく振ると
「あなた、誰?」
私の問いに少年は背から手を離し両手を自分の頭の後ろで組むと
口笛を小さく吹き
「そんなの、なんでもいいじゃん。花祭り行きたいんだろ?つれって行ってやるよ」
私に振り向くとにこっと無邪気な笑顔を向ける少年に
私は若干の不信感があった。
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