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その時だ。
ぷにっと凜子の頬を指すものがある。
「な、なに?」
急いで手で払いながらそれを確認する。
「泣いてなかったんですね。よかった」
目の前にはいつの間にかスーツを着た男の人が座っていて、その人の手が凜子を突いたのだ。
明らかに、ほっとした表情をした男に呆気にとられながら、今更ながらなぜこの人が目の前に座っているのだろうかと思考を巡らせた。
「窓のほうを向いて微動だにしないかと思ったら肩を揺らしだすので、泣いていらっしゃるのかと勘違いしてしまいました。そっとしておくのが一番かと思ったのですが、性分で思わず」
言い訳をするように笑う男は、どこか高級そうなスーツを着こなし物腰からして、人に命をだすものの雰囲気がある。
そもそもなんで……。
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