毒りんご中毒

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「…寒ぃ。」 「……ルキ?」 扉の向こうから葵の呼びかけが聞こえてきた。布団に潜り込みながら返事をしたけどきっと聞こえていないだろう。寝室の扉がガチャッと開いた。 「うわ、寒。おまえ何してんだ、クーラーガンガンやん。リモコン貸せ。」 「葵、さみぃよ。何とかしろよ、おまえのせいだ。」 「知るか、リモコン貸せって。」 被っていた布団も剥ぎ取られ握り締めていたリモコンはするりといとも簡単に奪われてしまった。葵はリモコンをクーラーに向けるとワンボタンでその働きを止めた。 「エコを忘れんな。」 「何がエコを忘れんな、だ。てめーは俺を忘れんな。」 「なに拗ねとるん。同業者やろーが。」 「うるせェんだよ死ねハゲ糞おっさん。」 「………おまえなぁ。」 情けない声を出しながらベッドに腰下ろす葵の腰に腕を絡めると思いっきり抱きついた。背中に頬をくっつけて体温奪うようにぎゅっと引っ付く。葵はうぉ、とかなんや、とか驚いた声ばかり上げていたけど構わずにずっと抱きついていたら呆れたような笑い声が聞こえてきた。 「寂しかったか?」 「ちげーよ馬、寒ィんだよ、クソ、暖めろ。」 「可愛くねー、寂しかったんやろ。素直に言ってみ。」 「だァ!つげこべうるせェな。とっとと抱き締めろっつッてんだよハゲ。」 「うるせーわかったよ」 俺の腕をやんわりと払いのけるとこっちに身体を向け情けないへたれな笑みを浮かべながら俺の茶髪を撫で、すぐにその腕が腰へと絡みついてくる。やっと直接感じることが出来た体温に身体を預けた。 「…仕事するとき部屋に閉じ込もるんじゃねェよ。」 「おまえが邪魔するからやろ。」 「だって仕事してるときの葵カッコいいし。」 「ルキがちょっかい掛けて進まねーから閉じ込もってんだ。」 「いいじゃん、俺も仕事するからさ。」 「ダメだっつッてんだろ、ルキがいると進まねーから。」 「けち!」 「ダメや。…俺かてルキに構いたくなるやん。」 …あ。不覚にも今のセリフにときめいてしまった。クソ。 結局、仕事中は一緒に居るなってことになったけど珍しく葵のあんなセリフが聞けたからまぁいい。とりあえずコンビニは連れて行ってもらう。 「…にしても、寒ィなこの部屋。ルキ、もうクーラーのリモコンは没収やからな。」 「えー…」 おわる  
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