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「葵ってさ、」
「んー?」
「最近関西弁使わなくなったよな」
ふと思った。だから聞いてみた。あんまり意識してなかったけど、少しずつ葵から関西弁が消えていっている気がする。昔は何にも違和感なかったけど、今の葵がコテコテの関西弁なんか使ったらぶっちゃけ変だ。違和感がある、てか寧ろそれしかない。
俺の家まで来てギターいじってる馬鹿なところは昔とは変わらないけど。
相変わらずな横顔を眺めながら何となく思ったことを言ってみたら、視線を俺に向けもせずに「そお?」なんて間抜けな声。
「ちょくちょく出るけど基本普通になったじゃん」
「まあ…もうずっと東京にいるし、そりゃ多少は抜けるだろ」
「なんか、いやだ」
葵の関西弁が抜けてきたのは別に今に始まったことじゃないし、何が変わったわけでもない。そこまでわかっているのになんか心のどっかがモヤモヤした。
何が嫌かなんてよくわかんないし一言じゃ説明出来ないけれど。
「いやって言われても…つーか、ルキだってだいぶ湘南訛り抜けてるやん」
「そ、だけど…」
変わってるのは葵だけじゃないのに何でこんなに不安なのかわからない。でもきっと気付かないうちに少しずつ変わっていってるのが怖いのかもしれない。
俺たちは男同士なわけで、普通の人が手にするであろう普通の幸せは今のままでは絶対に得られないものだ。
今はお互い必要不可欠な存在でお互いに好き合ってて永遠を感じていたって、気持ちの変化なんていつくるかもわからない。俺が変わるのか、葵が変わるのかもわからない。
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