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「…どうして…」
僕は、呟いた。
僕の体は、生温かい液体の中に横たわっていた。
その液体は、赤かった。錆の臭いがした。
ぼやけた視界に白いものが入ってくる。
それは、人の顔だった。
見覚えのある美しい顔…。
その顔が美しく歪んだ。
「…どうして…?」
僕は、美しい“ヒト”に訊いた。
【あなたが望んだからですよ】
美しい声だった。
美しい“ヒト”の顔がまた歪んだ。
笑っているのだ。
そう思った時、ザワザワと音が聞こえた。
『救急車を早く!』
『タオルを早く!』
『血が止まらないっ』
老若男女の声が入り混じって聞こえる。
でも僕の視界には、あの美しい“ヒト”の顔しか入らなかった。
僕は、その“ヒト”と初めて会った日の事を思い出そうとしていた。
あれは、3ヶ月前…バイトの面接帰りだった…。
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