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今すぐにでも逃げ出したかった。
ただ、“退出”をクリックすればいいだけ。
それができない。
僕じゃない僕が、それを拒んでいる、名無しの言葉を求めている。
名無し:そうだよ、恐れないで。
そうだ、部屋の窓を開けてごらん。
窓。
確かにこの部屋にも窓はある。
カーテンで閉ざし、鍵を閉め、完全に光を遮断した窓。
外の世界とこの部屋を隔絶している、窓。
嫌だ、開けたく無い、開けたく無い、開けたく無い……?
体が勝手に動いていた。
椅子から立ち上がり、パソコンから離れ、一直線に、窓へ。
止めろ止めろ、僕、何、何をしているんだ、僕、開けちゃ駄目だ、僕──止めろ!!
光を浴びた。
外の光は、まるで僕を浄化していくようで、心地良くて、温かくて──止まった涙が、再び溢れてきた。
もう当分止まりそうもない。
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