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  『Soul』     夢の中で悪魔は笑う 地獄の隅で天使は笑う 混沌の中 夏風の季節 俺は 俺は 息を荒げて     いつも通りの黒い笑みと 薔薇のような真紅の瞳は 混ざりあって 離ればなれ 胸を 胸を 締め付ける     「小さく儚い夢を追うのか 漠然とした平和を願うか」 頭の悪い俺には到底 わかりえない質問だけど   たった一つの誠のために 強くなりたいと望んでは 月は俺の背をそっと そっと照らしてくれた       キラリと刃は鋭く光る ささやかな弱気よ 塵になって消えてくれ 俺が戦う理由は一つ 俺が剣に生きることを 教えてくれたあなたのため   「剣術の恩は 剣で償う」 夢と地獄に誓った夜       愛しき人と過ごした日々 冷たい男(ヤツ)と交えた竹刀 空を見上げて 稲穂が揺れた 遠い 遠い お伽話さ     「闇に染まった鬼になるのか 天に遣える天邪鬼(アマノジャク)か」 頭の悪い俺には到底 理解しえない質問だけど   たった一人の己のために 正義でいたいと夢見ていては 月は俺の心でずっと ずっと微笑んでいた       ヒラリと上着が宙を舞う ほのかな迷いよ 塵になって消えてくれ 俺が死ねない理由は一つ 俺が生きていくことで 護れるものがあるはずだから   「敗れし敵の 想いも胸に」 だから明るく そう決めた夜       星が、瞬いた夏の暮れ 俺は、駆けて行く   _
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