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【Scene4】
「源はTV見ないの」
「うん、基本的には見ないかな」
「マジでか。遅れるよ、乗り遅れるよ」
「何が」
晃が小馬鹿にしたような動きをしたので、鋭く言ってやった。
「時代だよ。時代の並に乗り遅れるよ」
「バーカ、逆に晃はTVに踊らされているんだよ。いい加減、気付け」
すると晃は、椅子から腰を上げ、両手を頭のちょっと上でひらひらさせながら阿波踊りのマネをする。
「馬鹿でも阿保でも結構。踊らにゃ損、損」
返す言葉も見つからなかったので、ジョッキの底に数センチ残ったビールをグッと喉に流した。動作をとめずに、空のジョッキをテーブルに音を立てて置くと、「おねえさん、生ひとつぅ」と、周りのざわめきに負けない声で注文してやった。
「あっ、でもな、相撲は観るぞ。相撲だけは毎場所しっかりTVで観ているな」
「えっ、源は相撲ファンなの?知らなかったわ。関取の名前から部屋の名前まで暗記していたりすんのか」
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