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【Scene5】
「じゃあなんだよ、その先輩は髪を伸ばしただけで相撲取りになったってわけ。笑わせるな、だったら俺も髪伸ばすっつうの」
やっときた冷奴を口にしながら、晃は乱暴に言う。
「話に尾鰭が付いているから、どこまでが本当の話かわからないけどな」
「そりゃそうだ。そんな笑い話が本当であってたまるかよ」
「まあな。ただ、晃がどんだけ髪を伸ばしても、その天然カーリーヘアじゃ相撲取りは無理だろ」
サイババもびっくりの天然パーマをした晃の髪型を、思いっきりいじってやった。
途端に顔色を変え、晃はまたまた椅子から腰を上げて叫ぶ。
「バーカ、バーカ、これはカリフラワーじゃねぇよ、ブロッコリーだ。青々新鮮のブロッコリーだっつうの。塩茹でにしてお召し上がり下さいだ、バーカ」
晃の「塩茹でにしてお召し上がり下さい」は定番ギャグになりつつある。晃は笑いに貪欲だ。一通り笑った後で、俺は腕時計を見る。
「それにしてもグッキーのやつ遅くないか、九時には合流できるって言っていたのにさ」
「グッキーは、源や俺とは違って忙しいからな」
ぐちゃぐちゃに崩した冷奴を掻き込んで、晃は淡泊に言う。
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