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春、桜が空を舞う頃、私は高校生になった。毎日勉強した甲斐もあって、志望校には合格することができた。今日から始まる新しい生活に心躍らせていたのだが、ある事実を知り、手放しで喜べない状況に陥った。それは…
「柚梛、俺の話聞いてる?」
「え、あ…ごめん。聞いてなかった…」
「…はぁ~」
そう、今私の隣を歩く彼、山神桂杜君のせいだ。
学校への登校中、普段以上に不機嫌な顔をしている彼は、嫌味なため息をついて私を睨む。
「人の話ぐらいちゃんと聞けよ…」
「ご、ごめんなさい…」
「…まぁ、いいけどな…」
なぜ、こんなにも険悪なムードなのに一緒に登校しているかというと、彼が私の彼氏だからだ。
付き合ったきっかけは、私の告白で、その当時は彼のことが好きだった。しかし、中学三年の時に彼と迎えた初体験が私たちの関係を大きく変えた。
もちろんそんなこと初めてだった私は痛くて痛くて、泣きっぱなしだった。けれど、彼は自分の興味の赴くまま一回目が終わった後、大人の玩具でもっと痛めつけてきたのだ。
それ以来、表向きは仲の良さそうな恋人同士を演じているが、私自身桂杜君を恐れ、嫌っている。
なのに、なぜ別れないのか?それは、彼への恐怖感と一緒に過ごした月日が、私に別れを切り出す勇気を与えてくれなかったからだ。
高校に行けば離れられると思っていた私の考えは甘く、桂杜君も同じ学校を受けていた。それが冒頭で言ったある事実だ。
そんなこんなで、私は今日までズルズルと関係を続けているのだ…。
過去の私を振り返って落ち込んでいる私をよそに、明るい声が後方から聞こえてきた。
「柚梛ちゃ~ん!」
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