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☆
裕太は物凄く後悔していた。
たまたま彩が通りかからなかったら、裕太は今頃、暗い部屋でカツ丼でも食わされていただろう。
あの四十代前半の女性は彩と面識があったようで、謝る彩に『ビックリしたけど大丈夫よ、また遊びに来てね』などと言っていた。
「ていうか、あんた岬の家の前で何やってたの? あんな変態まがいな言動までして。あんたが幼なじみじゃなかったら、完璧にスルーものよ、アレは」
結局、あの状況では自分のパンツの事なんて言い出せず。
あのベッドの上には裕太の個人情報特盛りのパンツがまだ健在なはずだ。
「え? 岬ってあの珠希 岬? ACE of CAPEのボーカルの?」
ACE of CAPEというのは央知高校ではなかなかの知名度で人気もあり、近所の商店街からも支援されている男子二人女子三人の高校生バンドだ。珠希 岬はそのバンドのボーカルを担当しているのだ。
「そうよ。何? あんた知らなかったのに同級生の女子の家の前でウロウロしてたわけ? 私が知らない内にそんな趣味まで備えていたとは……いやはや」
何かとんでもない方向に誤解されている気がする。
「別にそんな趣味はねえよ……。ただ俺の……俺の私物が、まあ色々あって、あの家の部屋に入っちまったんだよ」
「それがパンツなわけ?」
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