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「まったく、岬ちゃんったら……追試は明日でしょ? ちゃんと勉強してるかと思えば……私ならパンツ教には入らないわよ」
「私だって入りたくないですよ、そんな教徒! パンツに聖像するつもりはないです!」
聖パンツ禁止令か……なんて凄く下らない言葉を思いついてしまった自分に涙が出る。
「って岬、今はそんなことを言ってる場合じゃ……」
あ、そうだった! と岬は我に返る。
危ない危ない。あのままじゃみんなで変な宗教団体を立ち上げるところだった。
んん……、と私は喉を鳴らして、場を仕切り直した。
「あ……ねえ、由衣ちゃん! この辺で……」
私が、そう言いかけて――
「裕太なら、ここを真っ直ぐ歩いて行ったのを、私は見たよ」
「――っ!?」
返ってきた言葉が、いきなりすぎて。その中にある名前に反応してしまった。
「やっぱり、裕太を探してるんだ」
「……何でもお見通しなんだね、由衣ちゃんは」
「ある程度のことは、ね。裕太がどこまで行ったかは、わからないけれど。私だって、街が見渡せてるわけじゃないんだし」
見渡す……裕太が行った場所。そうか。
「……わかった」
裕太がこの辺に来た最後ではなく――最初。
「あーや……?」
岬と由衣ちゃんが同時に私を見つめる。
「きっと……」
きっと、裕太はこの街を見渡しているんだろう。
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