為るようにしか成らない

6/23
前へ
/399ページ
次へ
「まったく、岬ちゃんったら……追試は明日でしょ? ちゃんと勉強してるかと思えば……私ならパンツ教には入らないわよ」 「私だって入りたくないですよ、そんな教徒! パンツに聖像するつもりはないです!」  聖パンツ禁止令か……なんて凄く下らない言葉を思いついてしまった自分に涙が出る。   「って岬、今はそんなことを言ってる場合じゃ……」  あ、そうだった! と岬は我に返る。  危ない危ない。あのままじゃみんなで変な宗教団体を立ち上げるところだった。  んん……、と私は喉を鳴らして、場を仕切り直した。 「あ……ねえ、由衣ちゃん! この辺で……」  私が、そう言いかけて―― 「裕太なら、ここを真っ直ぐ歩いて行ったのを、私は見たよ」 「――っ!?」  返ってきた言葉が、いきなりすぎて。その中にある名前に反応してしまった。 「やっぱり、裕太を探してるんだ」 「……何でもお見通しなんだね、由衣ちゃんは」 「ある程度のことは、ね。裕太がどこまで行ったかは、わからないけれど。私だって、街が見渡せてるわけじゃないんだし」  見渡す……裕太が行った場所。そうか。 「……わかった」  裕太がこの辺に来た最後ではなく――最初。 「あーや……?」  岬と由衣ちゃんが同時に私を見つめる。   「きっと……」  きっと、裕太はこの街を見渡しているんだろう。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

934人が本棚に入れています
本棚に追加