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「ねえ、彩。それで……どうするの?」
私がすぐに走り出そうとすると、由衣ちゃんがおもむろに私に声をかけた。
「……?」
「裕太を探し出して、それで岬ちゃんの家に連れ戻すの? ただ単に岬ちゃんの勉強のために、彩は裕太を探してるの?」
「……」
ちがう。そうじゃない。それだけでは、ないのだ。私には、目的が別にあって。私をそうさせる気持ちも、ちゃんとある。
だって、私は――
「国語なら、私であったって構わないでしょ? 裕太に負けないくらいの自負は、あるわ。裕太にはメールで伝えて、来た道を引き返すこともできるわよ。裕太を探し出すことが岬ちゃんの勉強のためなら、ね」
そんなこと。
「……ううん、由衣ちゃん。私は、裕太に会いに行くよ。私のために、私の中に会わなきゃいけない理由があるから」
――私は、決めたのだから。言わなきゃいけないことを、はっきりさせなければいけないことを。
「……そう、わかった」
そうとだけ由衣ちゃんは呟くと、何かを思うように固く目を瞑った。
「それでね、由衣ちゃんも……私たちと一緒に来てほしいの。岬と一緒に見守っていてほしいの。裕太が逃げ出さないように……私が、逃げ出さないように」
「……彩。それで、いいのね?」
「うん。これで、いいのよ」
裕太は由衣ちゃんを見て、それで――“本当のこと”を知った裕太は、わかってくれるだろうか。
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