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「……そうね、わかったわ」
由衣ちゃんは私の目を見つめたまま浅く頷いた。私もまた、ありがとう、と見つめ返して、
「じゃあ、行こう」
いつか裕太とふたり朱く染まったその場所へ、私たちは走りだす。
☆
「はぁ……っ、はぁ……はぁ……」
なかなか広いその公園の入り口に着いた私たちは三人とも息荒く、体感温度も上昇していた。
公園の中は暗がりで、詳しくは良く見えなかった。そして一本の電灯だけではあまりに頼りないその光が、私たちの不安を仰ぐのだった。
「……美波くん、本当に……ここに、いるのかな」
岬ちゃんがそう呟くと、彩は公園の奥、少し丘となった場所を指差して、
「きっと……あそこに、裕太はいる。あの東屋の……屋根の下に」
なんで彩はそう確信出来るんだろう……などと疑問を浮かべながらも、
「とにかく、近くに行ってみよ」
私はふたりにそう促した。
近づいてみて分かったことは、比較的滑らかな丘の周りには多少ばかりの草木が生えていることと、影がひとつそこに在ることだった。
「……裕太……っ」
隣で彩が拳を握るのがわかる。前に進もうと、今までを打開しようとしてるのがわかる。
でも、彩は。彩はきっと、すごく怯えている。
「……彩。少しだけ、待ってて」
震える彩に、私はそのまま呟いた。
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