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「覚悟……しときなさいよっ!」
彩が最後にそう叫んだ後、声のしていた辺りの草木がガサゴソと音を立てると、三つばかりの影が公園の外へと走っていった。
「…………」
言いたいこと、か。
わかる。わかってしまう。分からないふりはもう出来ない。彩は、させてはくれない。
逃げたら、それこそ自分には誰にも好かれる資格なんてものはない。
「ああ、わかってる。ちゃんと、聞くよ」
そう独り呟き……ってあれ。この後、勉強の続きをするのではありませんでしたっけ。……なにこれ、行きにくっ! と、半ば呆然として、しばらく。
岬の家に行くか行かまいか迷っていると、ポケットの中の携帯がブルブルと震えた。
「ん、受信メール二件――珠希さんと……由衣さん?」
『美波くん、参考書とアイス、ありがとう。えっと、自分のために今日来てもらっといて本当に失礼なんだけど……由衣さんが変わりに教えてくれるって言うからさ……って、あ、もちろん美波くんの参考書もバリバリ活用させてもらうよ! んん、本当に自分勝手でごめんね、ウチには今度は遊びにおいでなすってね!』
気を使ってくれたのだろう、何故か最後は舞子はんチックだけれど。
そして、この岬の長文メールに対して、由衣のメールはたった一文だった。
『仕方ないから、好感度のことはナシにしてあげるわ』
「あ、そう……」
なんか嬉しいんだか、悲しいんだか分からなかった。
――帰ろう。仕方ないので、裕太は徒歩で自宅に向かった。
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