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「ってかさ、美波くん」
「ん、なんだ?」
話変わるっちゃ変わるんだけど、と岬は前置きし、
「自転車のこと、忘れてない?」
「……あ」
そうだった。一昨日、あの後そのまま徒歩で帰ったんだっけ。
「忘れてたね~。美波くんってば、なにかとウチに置いてくね」
それはパンツのことでしょうか。そうなんでしょうか。
「あの事は忘れてくれ! って、忘れたのは俺か。自転車を」
「うんうん。でももう私の脳内に大量コピーしてフォルダになっちゃってるんだよね」
「なにそのフォルダ!」
「うん? パンツフォルダだよ?」
「嫌なフォルダ! 出来れば……消してほしいな、パンツフォルダ」
「うーん、でも私の思い出が……輝かしき青春の一ページが……」
「燃やしたいよ、その一ページ! ていうかそんな青春輝かせないで!」
「仕方ないな~、うん。まあ、いつか消えるだろうっ!」
「なんか安心出来ないけど、ありがとう」
大丈夫だろうか。永久保存されてないだろうか。……されてる気がする。
仕方ないから、裕太がそれを忘れることにした。これで解決、問題なし。
「で、自転車のことなんだけどさ」
「ああ、ごめん。今日の帰りに取りに行って大丈夫かな?」
「ってか、あれ、気付かなかった?」
見てないのかなー、なんて、岬は首を傾げながら、
「え、なにが……?」
「自転車、美波くんの家にあったでしょ?」
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