為るようにしか成らない

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  「そ、そういえば! あった……かなあ……?」  あったような、なかったような。登校はいつも徒歩だったので、今日もその辺は特に見ていなかった。 「あったはずだよ? だって、昨日あーやが『私が届けとくよ』って」 「そう、彩が……。彩が!?」  もし、それが本当だとしたら。 「う、うん。なにかいけなかった?」 「いや……そうじゃない。そうじゃないんだけど……」 「じゃあ、何故にそんなに驚いたの?」  だって、 「うん……あいつ、ペダルに足届いたのか……?」 「あー……」  岬も納得したように遠い目をした。 「彩のことだから、小さいのに無理して漕いで、途中で転んで怪我してないと良いけど……」  「……やっぱり、優しいな、美波くんは。でも本人に言ったらダメだよ? きっと怒っちゃうから」 「あはは。そうだな、きっと……『はあ!? せっかく届けてやったのに恩を仇で返すの!?』と言いそうだ」 「あ、言いそう言いそう! さすが美波くんだ。あーやのことを良く分かってらっしゃる」 「まあ、幼なじみだし、一緒にいること多いからな」 「まあ、たぶんそれだけじゃ、ないよね」 「……?」 「ううん、なんでもないっ。あ、信号青だよ! 渡ろうっ!」  信号が赤から青へ変わると、裕太たちと同じくそれを待っていた生徒たちもゾロゾロと歩き出す。 「おう」  校舎からは、トランペットの綺麗な音色が、心地良く響いていた。
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