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☆
文化祭――央知祭まで残り数日、学校全体が祭の前日の如くわいわいと活気付いていた。
それは、裕太のクラスも例外ではなく。
「美波、そこのガムテープを取ってくれないか?」
「ああ、ほいっ」
「って、おお。どこに投げてるんだ」
悪い悪いと、裕太は軽く謝る。
「てかさ~、“くのいち”は頑張り過ぎだ~。そんなんなら俺の分の仕事もしちょくれっ。なっ?」
「何を言う。俺が頑張らないで誰が頑張るんだ。お前らも頑張れ!」
喜多嶋に“くのいち”と呼ばれた男子生徒は「ほれ、手伝え!」と更に裕太たちを促す。
「え、けっきょく俺が頑張るの!? “くのいち”は頑張らないの!?」
「違う! みんなで頑張るんだ!」
熱血真面目野郎――そんなニックネームがぴったりと似合いそうなこの男子生徒こそが、裕太のクラスである2年B組のクラス委員長なのであった。
「おい、久野。少し勢いを押さえてくれ。喜多嶋がパンクしそうだ」
きっと喜多嶋の脳では情報処理しきれなかったのだろう。喜多嶋は「え、誰が頑張るの? みんな? 俺? 俺誰?」などとフラフラフラ、もう駄目だこいつ。
「ああ、すまん。何か悪いことをした気分だ。俺の責任は、俺が果たそう。行くぞ、喜多嶋!」
我らが委員長はそう言うと喜多嶋の前にドーンッと仁王立ちをして、両手を構えた。
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