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そして、喜多嶋の顔の目の前でパンッと大きくネコダマシをした。
「……ハッ。俺は一体何を……。俺は誰だ……? ああ、金持ちだ……」
裕太は殴りたい衝動をグッと抑えながら、残酷だが本当のことを喜多嶋に言ってやる。
「いいや、お前はバカだ、喜多嶋」
「そうだ。そしてお前はアホだ、喜多嶋」
「え、二人ともヒドくない!? 俺、バカかなあ!? アホかなあ!?」
涙目になりながらにクラスメイトにそう請う。……訊かない方が精神の為だと思う……と裕太は言いそびれ、時すでに遅し。
『え、今更……?』
『バカじゃなかったら、なんだって言うのよ』
『自覚がないって……罪だよね』
『…………かわいそう』
『バカは死なきゃ治らないって言うけど……いっぺん(略)』
『…………バカ嶋』
以上、クラスメイトからの声でした。
「…………」
「……さーて、みんな! 仕事するぞー」
『おー』
「教室の隅に何かいるようだけど、気にせず頑張ろー」
『おー』
「えいえい」
『おー』
……酷かった。このクラスメイトたちは思った以上に酷かった。
委員長の掛け声に合わせて叫ぶクラスメイト。なんだか変な連帯感が出来てしまった。
きっとあれだ。行く道に、死にそうな虫と、道に迷ってる喜多嶋がいたら、迷わず死にそうな虫を助けるようなやつばかりなんだ、このクラスは。
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